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A  雨


ときどきテントの中で雨の音を聞きたくなる。

雨粒がテント地に当たると乾いた、小さな打楽器のような音を立てる。

静かな音はできたての雨。

入口の垂れ幕を上げると、雨になりそこなった霧が森の端に引っ掛かって針葉樹のてっぺんをぼやかしている。
携帯電話など通じない谷の中なら、いい一日が過ごせる。釣りに行くか、行かないかは雨の強さと、川の水の高さで決めよう。

あまり濡れるとやっかいだ。焚火ができればいいが、そうでないと濡れたままで寝ることになる。
一日テントの中で寝てたっていい。

羊の数を数えてもいいし、うまくいかないで別れた女の数を数えてもいい。

この雨の中で濡れ細っている、サシバのヒナを想ってもいいし、重い腰をあげて道路を横切っていくヒキガエルのことを想像してもいい。

夕方、雨がやんで空が真っ赤に燃えた。

明日、水が落ち着けばいい釣りができるだろう。
夜はすばらしい星空になった。

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柴野邦彦 プロモビス 水彩画 フライフィッシング
kunihiko shibano promobis Watercolor Fly fishing

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