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I  インチワーム (Inchworm)

  尺取虫のこと。

インチとは長さの単位で1フィートの12分の1。

あの虫の歩く格好は洋の東西を問わず、寸法を測っているように見えるのだろう。

これは魚にとっては極上のソーセージに違いないから、この虫のイミテーション・フライはもちろん存在する。

日本では夏のイワナ釣りに絶大なる効果がある。

作るのは簡単で、グリーンの棒状のものならなんでもかまわない。

試験管ダワシなんていうのが流行った時代もあって、緑の毛虫か尺取虫によく似てた。

知っている人は懐かしいだろう。

グリーンに染めたディアヘアーを折り返して作るやつはよく浮いて具合がいい。

もっとも緑のカディス・ピューパのフライだって姿、形は似たようなものだ。

インチワームとして使ったって魚が怒るわけでもない。
 この類のフライはウエットでもないし、蛾の幼虫といえどもニンフではないし、浮いたところでドライには分類しにくい。

木の枝から落っこちてくるから、やはりテレストリアルということになるのだろうか。
 信州の山奥で究極のインチワームを見たことがある。

冬はスキーリフトの番人をやっている角間川のジュウちゃんのやつだ。

投げた毛鉤に魚が浮いてこなかった時、ジュウちゃんは噛んでいたロッテのグリーンガムをテンカラ鉤のまわりに細く捻りつけた。

ジュウちゃんがガムなんぞ噛んでいるのを見るのは朝からの謎だった。

てっきり、トウキョウから来た人間に田舎者と思われないため、野球選手の真似をしたのかと考えていた。重さを増した毛鉤はユラユラと沈み、大きなイワナが何の疑いもなくそれをパックリと食った。

効果は絶大だったが、これがフライフィシングといえるかどうか、自信はない。

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