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 Leader

 7Xとか8Xなどというリーダーで鱒を釣るのは、どう考えても卑怯な気がする。魚のほうはこの50年、100年ちっとも進化していないのに、釣り具のほうは飛躍的な進歩をとげている。このままでいったら、魚釣りなど透明人間が殺人を犯すくらい易しくなってしまうのだろうか。

 昔のピグスキンのフライブックと呼ばれるものに古いフライが残っているのを見ることがある。小さなウエットフライがガットに結ばれたままポケットにはいっているが、そのガットの太さたるや、1X、2Xといったところだ。昔の人はそれで釣っていたし、それで釣れていたのだ。

 3Xより5Xのほうが、5Xより7Xのほうが、そして7Xより8Xのほうが魚にとって不利になるのは間違いない。そして、魚が糸を切って鈎を刺したまま泳ぎまわる確率も高くなる。

 フランスのベルギーの国境に近い湧水の池、ソムディユーにはリーダーに関する規則があった。うろ覚えだが、20/100mm、4X相当より細い糸は使ってはいけないことになっていた。もちろん、管理人が計器をもって測りにくるわけではないので釣人は紳士になる必要があるのだが、なにしろ水がこれ以上ないほど透明なので、リーダーを細くしたい誘惑はつねにオデコのあたりを飛びまわる。このレギュレーションがある理由は、餌代のたっぷりかかった潜水艦のような大きな鱒がたくさん入っているからで、細い糸で必要以上に魚を弱らせたり、魚に鈎を残さないためだ。

日本にないレギュレーションで思い出すのは、セーヌ河のほぼ源流、川幅が忍野くらいの場所、ヴィックスではウェイダーはヒップまでという規則があった。必然的に川に入れる場所は限られる。河原がなく深いから、赤い斑点のあるブラウンが隠れている水藻の美しい川の中を歩くことは不可能で、もちろん、川を荒らさないための配慮だ。

 自然の川で釣りをするときに規則だの、制約だのがあるのははなはだ不愉快だが、管理釣場や、キャッチ・アンド・リリースというように前提をもうけ、たくさんの釣人のためにつくられた釣場では、もうゴルフ場を同じように、ゲームを楽しむためのレギュレーションがあっても仕方がないような気がする。

 それにしても、自然の川でいくらレギュレーションがないといっても、どうして山梨のエサ釣り師は人のサオの前へ竿をだすのだろう?

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