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L Luck (幸運)
ヴァンクーバーのサーモン・ダービーでは、参加者の舟が行き会うと“釣れてるかい?”と訊くのに、 “Any luck?”という。つまり、アンタのウデを訊いちゃあ悪いから、それは抜きにして 「幸運があったかい?」という優しい配慮のにじみでた言い方だ。
このLuckは一人で釣りをしている時にはあまり問題にならない。釣れるも釣れないも、自己責任で、自分で勝手に満足して帰ればいいからだ。問題は気心がしれたり、しれなかったりする誰かと釣り歩く時だ。彼のほうは何分かおきにサオが曲がって、キミのサオは直立不動の場合、いろいろと技術的な反省の必要がある。
彼がバックキャストをするとき、長い木の枝をそっちの方向に押したか? 彼のフライが着水する瞬間に、よろけて石を蹴とばしたか? サオ先を突っ込んでかき回したプールを彼に譲ったか? 川に入る前に彼のウェーダーにサーモンフックで穴を空けておいたか? 彼のリールの回転部とラインの一部にランチに食ったジャムを垂らしておいたか? そうしたことをもう一度考えてみるといい。
釣りにおいては技術はつねに、幸運よりも上に立つものだからである。
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