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H  ハイウェイ High Way

 

峠のトンネルを抜けると山裾に小さな光の帯が広がる。

イヴニングの後、夜の底を走り続けてここまで来ると、やっと帰って来たと思う。

クルマよ、あれはTokyoの灯だ。この高速道路ができて以来見慣れている光景。

帰りたい時もあるし、帰りたくない時もある。
 地平線がずっと広く、夏の終わりの太陽がいつまでも落ちずにフェンスを赤く染めていた。

道路を横切って縞模様を作る長い影を踏んで走っていると、一人で釣りにいく自由に酔い、けれどどことなく虚しかった。

先のほうで光っているのは日本海。
 関東平野を北へ抜けると、低い山並みに行き当たる。

そこに大きなドライブインがあって、太陽が上がると生まれたばかりの気流と遊ぶ鷹が見える。

朝の渋滞が始まる前に東京を離れれば、もう急ぐことはない。

ぼくたちはナマケ釣師だから、いつもここで朝食にする。
 釣りと高速道路は何の関係もないが、釣人はそこで長い時間を過ごす。

片道二時間なら、四時間。

三時間なら六時間。だから年季のはいった釣師は釣りに行く時の高揚した気分も、冷たい風に一日吹かれた後のボディーブロウのような疲れも、大物を掛けた日の誰かに会って話したくて仕方のない思いも、この長い単調な灰色の線の上で味わう。

そうして、高速道路は古女房のような存在になるのだ。
 

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