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D  ダッピング (Dapping)

 タブチ先生の訳したシェリダン・アンダーソンの『カーティス・クリーク宣言書』の中に、“キャストしないでフライを水面に落とす不名誉なやり方”と書いてある。

小生も実戦ではずいぶんと名誉を捨ててやってみた。 

サカナの鼻先に向かって、ヤブの隙間からそっとサオを出すのだが、そう簡単でもない。

枝の間にサオを通せば、ぶらぶらしたフライはバンジージャンプをしたくないので、ところかまわずしがみ付く。

サオ先がやっとヤブを抜ければ、ラインの重みがフライをトップガイドまで引き上げる。

サオの影が水面に落ちれば、サカナは電光石火のごとく雲隠れする。

世の中がみんな敵に廻っているのではないかと思うのはこんな時だ。
 ダッピングというのは、キャスティングが未熟で胃袋が水生蛋白質を欲している時にやる奥の手だとばかり、ついこの間まで思っていた。

ところが、イギリスの本を読んでいたら本家では全く別の釣法だった。

フライが水面でチョンチョンと跳ねるのは同じだが、こちらはロッホ(湖)でのボート釣りの技術だ。“ダッピングは風の技”と言われている。17フィート、18フィートといった長いサオを高く掲げ、微風でも良く動くように軽いラインを使う。あとは風にまかせてチョンチョンと水面を跳ねさせる。

アイルランドやスコットランドのウエスト・ハイランドでは百年以上前からこの釣法があった。

ダップ(dap)と呼ばれるものは生き餌でも、アーティフィシャル・フライでもよく、大きなシートラウトもこれで釣る。
 テンカラ師がよくやる、竿先を震わせて、水面の毛鉤を震わせるやつ、あれは和式ダッピングとでも呼ぶのだろうか。

今度イギリス人に教えてやろう。
 

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